磯の香り 18×24cm   

  貨車から降ろされ、また行軍が始まった。突然隊長は「磯の香りがする」と叫んだ。 我々は日本海の近いことを疑わなかった。しかし、トロッコを押す先着の日本兵は 「馬鹿なことをいうな、ここはシベリアのどまんなかだぜ」というとソ連兵に追い 立てられて雪の丘に消えていった。我々はまだ還る希望を夢見ていた。